新年にあたって

先生は、いつも真実しか口に出されません。

全国から同門の人たちが集まる研修会などでも、ご自分の道場にいらっしゃるときと同じように、必要最小限のコメントしかおっしゃらないため、言われる相手にとって、とてもきつ~い一言になることが往々にしてありました。そのため、後輩にあたる先生たちから大変恐れられていました。

ある研修会で、目の前で二刀の稽古をしている先生たちがいらしたので、見ていると、私が先生から習った動きとはだいぶ違うことをやっていらっしゃいました。「あ、先生、これを見られなきゃいいがなぁ。。。」と思った瞬間、やはり先生がつとその先生たちに近づいて、一言、「それは天道流をやってるの?」

常に先生の後ろに黒子のように控えてついていたので、私には先生がこの状況を見逃すはずがないことはわかっていました。でも、先生が声をかけられたことは、その先生たちに良かれと思われてのことだったはずです。

先生は、ご自分の道場でも、一生懸命に自分で会得しようとしている弟子にだけ、真摯に向き合ってくださいました。だから、先生から注意を受けたり直されることは、自分が必死に稽古していることを、先生に認めていただいていることを意味しました。反面、心底から自分と向き合うことをせず、表面だけ稽古して、深く掘り下げようとしない人とは、井戸端会議的な話しかなさいませんでした。

長いことお稽古をして、本当の切り結びがわかった時、田舎者の私は感動して思わず涙を流してしまいましたが、あの怖い先生が、私を見てもらい泣きされました。本当に先生はそんな素晴らしい方でした。

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